2024/04/30

【ミステリーファン必見!】英国ミステリー界の巨匠アン・クリーヴスおすすめのミステリー小説をチェック

英国ミステリー界の巨匠として、国内外で人気のアン・クリーヴス。日本では邦訳版が発売されているジミー・ペレス警部シリーズが有名です。北東イングランドを舞台にベテラン警部ヴェラ・スタンホープの活躍を描くドラマ『ヴェラ~信念の女警部~』の原作はアン・クリーヴスの同名小説で、ミステリーファンにはおなじみの作家です。2023年には待望の新シリーズ第一作『哀惜』の邦訳版が発売され、今後の展開も気になるところ。そこで、今回はミステリーファンならぜひ読んでおきたいアン・クリーヴスのおすすめミステリー小説をご紹介します!

アン・クリーヴスとは

1954年、イングランド西部ヘレフォードシャーに生まれたアン・クリーヴス。1986年に『A BIRD IN THE HAND』でデビューを果たします。『A BIRD IN THE HAND』はジョージ&モリーシリーズとして全8冊が刊行されています。1987年には家族(夫と二人の娘)でイングランド最北東部の州、ノーサンバーランドへ移住。この土地の風土が彼女の創作に大きな影響を与えているようです。

アン・クリーヴスの作品はシリーズものが多いのが特徴。1990年以降はラムゼイ捜査官シリーズとして6冊、1999年以降はヴェラ・スタンホープシリーズとして9冊を世に送り出しています。そして2006年には〈シェトランド四重奏〉シリーズの第一作『大鴉の啼く冬』を刊行。本作は英国推理作家協会(CWA)最優秀長篇賞を受賞し、邦訳も発売されています。

シェトランド諸島を舞台にしたシリーズは『大鴉の啼く冬』『白夜に惑う夏』『野兎を悼む春』『青雷の光る秋』までの4作がシェトランド四重奏と呼ばれ、『水の葬送』『空の幻像』『地の告発』『炎の爪痕』までは、ジミー・ペレス警部の物語ではあるものの、〈シェトランド四重奏〉とは異なる新しい形で綴られている物語であるのが特徴です。

2012年にはコリン・デクスター、アガサ・クリスティー、コナン・ドイルの巨匠たちとともに英国推理作家協会殿堂入りを果たし、2017年に英国推理作家協会ダイヤモンド・ダガー賞(巨匠賞)を受賞。そして2020年には『哀惜』(邦訳の刊行は2023年)でアガサ賞最優秀長篇賞受賞している人気の高い英国を代表するミステリー作家です。

必読!ジミー・ペレス警部シリーズおすすめの長編8選

『大鴉の啼く冬』

アン・クリーヴス(著) 玉木亨(訳)
出版社(レーベル):東京創元社

2006年英国推理作家協会賞最優秀長篇賞受賞作。新年を迎えたシェトランド島。孤独な老人を夜に訪れた黒髪の少女は、四日後の朝、雪原で死んでいた。真っ赤なマフラーで首を絞められて。顔見知りばかりの小さな町で、誰が、なぜ彼女を殺したのか。ペレス警部の捜査で浮かびあがる、8年前の少女失踪事件との奇妙な共通項とは。

ペレス警部が初登場。ある種、密室のような閉鎖的な土地で起きる事件に複雑に絡む人間模様。狭い人間関係と自然や文化の描写も注目ポイント。事件の真相は舞台となるシェトランドにぴったりの仄暗さを漂わせています。シェトランド島はイングランドとノルウェーの間に位置しているせいか、北欧ミステリーっぽさも感じられます。

『白夜に惑う夏』

アン・クリーヴス(著) 玉木亨(訳)
出版社(レーベル):東京創元社

シェトランド島に夏がやってきた。人びとを浮き足立たせる白夜の季節が。地元警察のペレス警部が絵画展で出会った男が、次の日、桟橋近くの小屋で道化師の仮面をつけた首吊り死体となって発見される。身元不明の男を、誰がなぜ殺したのか。ペレスとテイラー主任警部の、島と本土をまたにかけた捜査行の果てに待つ真実とは?

〈シェトランド四重奏〉シリーズの第二作。暗くならない夜。前作で漂っていた仄暗さとは違って明るい雰囲気に包まれるのか、と思いきや、白夜が人を惑わしていく物語。ペレス&テイラーのコンビもなんだかうまく噛み合わない印象なのですが、それも伏線のひとつ。前作に引き続き、今作でも人間描写の巧さに引き込まれる。本格ミステリーの中に大人の恋愛も描かれる、読み応えたっぷりの一冊。

『野兎を悼む春』

アン・クリーヴス(著) 玉木亨(訳)
出版社(レーベル):東京創元社

シェトランド署のサンディ刑事は、帰省したウォルセイ島で、祖母ミマの遺体の第一発見者になってしまう。ウサギを狙った銃に誤射されたように見えるその死に、漠然とした疑惑を抱くペレス警部はサンディとふたりで、彼の親族や近くで遺跡を発掘中の学生らに接触し事情を探ることに。小さな島で起きた死亡事件の真相とは?

シリーズ三作目でも、濃厚な人間模様の描写は健在。血のつながりのある家族ならではの愛憎入り混じる複雑な心理が描かれます。ペレス警部がスペイン人の血を引くことからもどこか異国の香りが漂っていたシリーズですが、今回はドイツや北欧との関係も絡み、古代遺跡で考古学を学ぶ学生らも登場し、よりエキゾチックな雰囲気が漂います。

『青雷の光る秋』

アン・クリーヴス(著) 玉木亨(訳)
出版社(レーベル):東京創元社

婚約者を両親に紹介するために、ペレス警部は故郷のフェア島を訪れていた。フィールドセンターでひらかれた婚約パーティーの直後、センターの職員が殺される。嵐の直撃で孤島となったため、単身捜査を開始したペレス警部だがーー。

〈シェトランド四重奏〉完結編。舞台はシェトランド諸島の中でも、本島からさらに離れたフェア島。シリーズ三作目の前作よりもさらに小さい島は、ペレス警部の故郷です。悪天候でシェトランド本島との交通が遮断される中で始まるペレス警部の捜査。最終章でも人間模様の闇を描くアン・クリーヴスの筆力が光ります。人間ってやっぱり一筋縄ではいかないんだなと。〈シェトランド四重奏〉シリーズ完結編の結末には様々な意見が寄せられましたが、結果、ペレス警部シリーズは続いていくこととなります。

『水の葬送』

アン・クリーヴス(著) 玉木亨(訳)
出版社(レーベル):東京創元社

シェトランド諸島の地方検察官ローナは、小船にのせられ外海へ出ようとしていた地元出身新聞記者の死体を発見する。病気休暇中のペレス警部も捜査に加わり、島特有の人間関係とエネルギー産業問題が絡む難事件に挑む!

ペレス警部が捜査に復帰し、シェトランド等を舞台に展開するミステリーが再び幕を開けます。位置付けとしては〈シェトランド四重奏〉の続編、新シリーズの1作目となります。前作までとはペレスの立場が変わったため、見えるものも変わっている模様。気が優しく人の話を聞き出すのがうまいという点では変わらず。変わらず変わったペレス警部の人生、キャラクター性も見どころ。

『空の幻像』

アン・クリーヴス(著) 玉木亨(訳)
出版社(レーベル):東京創元社

「浜辺で踊る白い服の女の子を見た」。そう話した翌日、女性はシェトランドのアンスト島で失踪、ペレス警部たちが捜索を開始してまもなく死体で発見された。彼女はテレビ番組制作者。親友の結婚式のため夫や友人と島を訪れていた最中の悲劇だった。彼女の見た“少女”と事件との関わりとは。

英国最北端の島の厳しくも美しい自然の描写に吸い込まれます。心の復活は完全ではない(癒える日がくるのかは難しいところ)ですが、ゆっくりと着実に前に進もようとしている感じが伝わってきます。幽霊の伝説、結婚式に参加した人たちの複雑な人間関係が絡み、謎に満ちた事件になっていきますが、ペレス警部の地に足のついた捜査は安心感を与えてくれます。

『地の告発』

アン・クリーヴス(著) 玉木亨(訳)
出版社(レーベル):東京創元社

ペレス警部が知人の葬儀に参列している最中に大きな地滑りが発生。土砂が直撃した空き家で身元不明の女性の遺体が見つかる。しかし検死では、女性が地滑りの前に殺されていたと判明。身元の割り出しを急ぐペレス警部だがーー。

前作では結婚式、本作では葬儀がテーマに。シリーズではお馴染み。土地に根ざした人、外からやってきて影響を及ぼす人が織りなす人間模様を、美しいシェトランド地方の四季とともに描き出す物語です。〈シェトランド四重奏〉シリーズ一作目のキーパーソンが絡み、新シリーズではありながらも繋がっている感が味わえます。シェトランド諸島を舞台にした長編は本作で7冊目。この土地のことならなんでも知っています、といった気分になり、より没入感を楽しめます。

『炎の爪痕』

アン・クリーヴス(著) 玉木亨(訳)
出版社(レーベル):東京創元社

シェトランド本島に移住してきたヘレナは、前の持ち主が納屋で自殺して以来、何者かが家に侵入し謎めいた紙片を残していくことに悩まされていた。その納屋で、今度は近所の家の子守りが死体で見つかってーー。

2006年から2018年まで続いたジミー・ペレス警部シリーズの完結編。邦訳は2007年にシリーズ1作目、シリーズのラストが2022年の刊行なので15年かけて見届けてきたシリーズとなりました。シリーズラストのテーマは悲しい親子関係。誰もがみんなのことを知り尽くしている小さな島を舞台に様々な家族を通して人間の複雑さを描き出してきたシリーズ。明らかとなった真相は悲劇的ではあったものの、前を向いているペレス警部の様子も確認できたので、シリーズが終わるのは寂しいけれど(スピンオフ希望!といった声も多い模様)エピローグとしては満足できるはず。

新シリーズ第一作が登場!

『哀惜』

アン・クリーヴス(著) 高山真由美(訳)
出版社(レーベル):早川書房

新シリーズの主人公はバーンスタブル署の警部マシュー・ヴェン。事件と真摯に向き合うマシューは応援したくなるタイプ?!

海岸で死体が発見された。被害者は近頃町へやってきたアルコール依存症の男で、捜査を行うマシューの夫が運営する複合施設でボランティアをしていた。心に病を抱えながらも、立ち直ろうとしていた彼を殺したのは何者なのか?

イギリスの北の端・シェトランド諸島からググッと南、イギリス南西部ノース・デヴォンへ。新シリーズの舞台はアン・クリーヴスが子どもの頃過ごした場所で、今回も自然の描写が映える土地になっています。マシューをはじめとする複雑なキャラクターの描写が非常に興味深い!アン・クリーヴスの巧みな筆致が冴える新シリーズ。早くも今後の展開に期待が高まります。

最後に

英国ミステリー界の巨匠アン・クリーヴスの描く人間模様はどれも味わい深いものばかり。世界的に人気を誇り、シリーズものもたくさん手がけているアンですが、現在、邦訳が楽しめるのは大人気のジミー・ペレス警部シリーズとマシュー・ヴェンを主人公に迎えた新シリーズのみ。邦訳がなくてもドラマで楽しめるシリーズもあり。閉ざされた環境においての人間関係の摩擦によって起こる事件を書くのが得意なアンが手がける端正で緻密な謎解きミステリーを堪能してみて!

ドラマもチェック!

ミステリーチャンネルでは、アン・クリーヴス原作のドラマを放送しています。5月は、2作品の最新シーズンが登場!

【放送情報】

●ヴェラ~信念の女警部~(シーズン13・全3話)

字幕版:5/12(日)夕方4:00 一挙放送
★新シーズン放送前に、シーズン1~12も放送中
字幕版:月曜~金曜午前11:00 ※GW期間を除く

今年1月に英国ITVで放送された最新シーズンをいち早く放送!
英国推理小説界の至宝アン・クリーヴス原作。今やITVの看板ドラマとなった英国の国民的人気シリーズ!
イングランド北東部を舞台に、仕事中毒で部下に対して厳しい一面を持つ、言わば鬼上司的な刑事ヴェラが、人間の心の機微を深く読み取りながら事件を解決に導く!
今シーズンでは約10年ぶりにデヴィッド・レオン演じるジョー・アシュワース刑事が復帰する!

「ヴェラ~信念の女警部~」番組公式サイト

●シェトランド(シーズン7・全3話)

字幕版:5/26(日)夕方4:00 一挙放送
★新シーズン放送前に、シーズン1~6も放送
字幕版:5/11、18、25(土) 毎週土曜夕方4:00

「ヴェラ~信念の女警部~」の原作者アン・クリーヴスが英国推理作家協会(CWA)最優秀長編賞を受賞したシリーズとして日本でも翻訳本が発売されている大人気シリーズのドラマ化!
2023年11月に英BBCで放送された最新シーズン!

「シェトランド」番組公式サイト

<ミステリーチャンネルについて>
世界各国の上質なドラマをお届けする日本唯一のミステリー専門チャンネル。「名探偵ポワロ」「ミス・マープル」「シャーロック・ホームズの冒険」「ヴェラ~信念の女警部~」など英国の本格ミステリーをはじめ、「アストリッドとラファエル 文書係の事件録」などのヨーロッパの話題作や「刑事コロンボ」といった名作、人気小説が原作の日本のミステリーまで、選りすぐりのドラマが集結!ここでしか見られない独占放送の最新作も続々オンエア!

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ライター/タナカシノブ
紹介文:2015年9月よりフリーライターとして活動中。映画、ライブ、歌舞伎、落語、美術館にふらりと行くのが好き。